認知症の介護は適切な対応をすることで、負担を大きく減らすことができます。
認知症の介護は本当に本当に大変ですよね。
・どこに行くか分からない。
・暴力を振るってくる。
・家じゅうを便で汚す。
認知症になるとこのような様々な症状が出てくるので、ひと時も目が離せないこともあるかと思います。
そのため介護している家族は、一息つく暇もありません。
あなたは大丈夫ですか?
夜はきちんと眠れていますか?
認知症の介護の負担を少しでも軽くするために、認知症の症状別対応マニュアルを作りました。
この記事を活用することで、少しでもゆとりある時間を確保してください。
認知症介護の注意点
認知症の人への対応をする際に、注意すべきポイントが6点あります。
その注意がおろそかになってしまうと、
・機嫌が悪くなる
・暴力行為をする
・認知症の症状が進行する
ということが起こる場合があります。
なので認知症の人の対応をする際は以下の注意点を踏まえて対応するようにしましょう。
信頼関係を築く
認知症の人と関わる上で信頼関係はとても重要となります。
想像してみて下さい。
もしたった一人で異国に舞い込んでしまったとしたら、、、
今自分がどこにいるのか分からない、周りには知らない人だらけ。
とても不安になると思いませんか?
認知症の人はまさにそのような不安を抱えています。
そしてその不安から怒鳴ったり、暴力をふるったりという行為につながっていることが多いのです。
なのでその不安を取り除いてあげるためにも、介護者との信頼関係が大切になります。
信頼関係を築く上で大切なのは、
・否定しない
・怒鳴らない
ということです。
まず「否定しない」に関しては、例えば本人が思い込みや妄想から「泥棒が来た」と言ったとします。
そのような時に「泥棒なんか来てないわよ」と真っ向から否定すると、本人の中では泥棒が来たということが事実になっているので家族に対して「この人は信用できない」となってしまうんです。
そのためそのような場合は否定せずに「そうなのですね。大丈夫ですか?」と、本人の言い分を受け止めるようにしましょう。
また「怒鳴らない」に関しては、認知症の介護をしているとどうしてもイライラしてしまうことが多々あります。
そのため「何度言ったら分かるの!?」「いい加減して!!」と怒鳴ってしまうこともあると思います。
しかし認知症の人は出来事などはすぐに忘れても、その時の感情は覚えているものです。
なので怒鳴られた⇒怖かったという印象だけが残り、本人の不安を増強させてしまう可能性があります。
不安が増強するとさらに怒鳴ったり、拒否したりと認知症の症状が助長されるという悪循環が生じてしまいます。
なので「否定しない」「怒鳴らない」という点に注意して、信頼関係を築くことを心掛けましょう。
また会話しながらスキンシップをとることも、信頼関係を築く上で有効ですよ。
尊厳を守る
尊厳を守る事も認知症の介護には重要となります。
たまに「認知症の人はなにも分かっていない」と思い、認知症の人に対して下に見るような言動をしたり適当に対応したりする人がいます。
しかし認知症の人も自分の感情はしっかりと持っています。
そのため「バカにされている」「適当にあしらわれている」ということは分かるので、ショックを受けたり、怒ったりします。
その結果、暴言・暴力につながったりうつ病を併発する場合もあります。
相手の尊厳を守るためには、本人の話にしっかり耳を傾け、相手の気持ちを大切にした言葉かけが重要になります。
急に生活のリズム、環境を変えない
認知症の人の生活リズムや生活環境は急に変えてはいけません。
高齢になると新しい習慣や、環境に慣れるのが難しくなります。
高齢になると認知症でなくても、慣れないことが起こると頭の中がパニックになってしまうことがあるんです。
環境の変化が高齢者に与える影響は凄まじく、とてもしっかりしていた人でも入院による環境の変化によって突然暴れたり、医療スタッフに暴力を振るったりすることが多々あります。
これが認知症の人となるとさらに環境の変化を理解するのが難しくなるため、余計パニックを起こしやすくなります。
このように環境の変化により認知症の症状が悪化することもあるので、生活のリズムや生活環境は可能な限り変えないようにしましょう。
体調管理をする
認知症の症状を悪化させないためには、体調管理も重要となります。
特に気を付けたいのが脱水と低栄養です。
脱水や低栄養になると、意識がボーっとし、体にも力が入らない為、理解力の低下や、今まで出来ていたことが出来なくなるということが起こります。
そのため脱水と低栄養には注意を払わなければなりません。
しかし認知症の人の場合、喉が渇いたという感覚が分かりにくいため水分補給がおろそかになってしまいがちです。
そのためこまめに水分摂取するように声かけをしてあげましょう。
また持病の悪化により体調を壊すと体調不良が原因で食欲が低下し、低栄養になりやすくなります。
そのため持病の薬がある場合は確実に服用できるように管理し、体調不良が見られた際は早めに受診するようにしましょう。
薬を確実に飲む
認知症の薬やその他抗精神薬など飲んでいる場合は、きちんと指示された時間に指示された量を飲むようにしましょう。
薬にはそれぞれ「効果が持続する時間」というものがあります。
その効果が持続する時間が途切れないようにするためにも、決められた時間に飲む必要があります。
自分で出来る事は自分でしてもらう
認知症の症状の進行を抑えるのに、とても大切なのが「自分でできる事は自分でする」ということです。
食事、着替えなど、自分でしてもらうとすごく時間がかかるため、つい介助してしまうということもあると思います。
しかし本人が自分で出来ることを介助すると、本来出来ていたことが出来なくなっていきます。
本人の残っている能力を維持するためにも、自分で出来ることは自分でしてもらうようにしましょう。
21の症状別対応マニュアル
失禁
認知症の人の失禁の原因として3つの原因が考えられます。
この原因によって対応方法が異なります。
認知症の失禁の原因として
・トイレの場所が分からない
・尿意が分からない
・足腰が弱り上手く歩けない為、トイレまで間に合わない
というものです。
トイレの場所が分からなくなるという場合、繰り返して教えてもすぐに忘れてしまいます。
そのため「覚えてもらう」という考えは捨てましょう。
トイレにステッカーなどを貼り分かりやすくすることで、トイレに行けるようになることがあります。
尿意が分からない場合は2~3時間おきに、トイレに誘導してあげましょう。
そして本人の排泄時間が分かってくれば、その時間に誘導するようにしましょう。
トイレにいきたくなるとソワソワしだすなど、その人特有の行動が見られることもあります。
そのため前兆としてそのような行動がないかも観察してみましょう。
足腰が弱ったことでトイレに着くまでに間に合わない場合はポータブルトイレを利用しましょう。
ポータブルトイレは、ベッドの横などに置ける椅子のようなトイレです。
介護保険を利用してレンタルすることも出来ます。
失禁の片付けは、介護者にとって大きな負担になると思うので、普段はパンツではなく、リハビリパンツ(パンツ式のオムツ)を着用することをお勧めします。
また失禁してしまった場合は怒ったりせず、「綺麗にしましょうね」と言い着替えや片付けをしましょう。
不潔行為
不潔行為による介護者の負担も減らす方法があります。
不潔行為でよくあるのが汚れた下着を隠す、オムツを外す、便を触るというものです。
まず下着を隠すのは失禁してしまったことを知られたくない、恥ずかしいという思いの現れです。
なので汚れた下着を隠していても、叱ったりしてはいけません。
そのような場合は本人には何も言わずに下着を片付けましょう。
またオムツを外す、便を触るという行為は自分で片づけようをしたが上手くできなかった、気持ち悪かったということが原因の場合が多いです。
そのため便失禁をした時は、後回しにせず速やかに処理をしましょう。
高齢者は便秘になりやすいため、下剤を飲んでいることが多いのですがその下剤が原因で下痢になる場合があります。
下痢をすると便回数が頻回になるので、その度に不潔行為をされると本当に困りますよね。
そして何より本人にとっても下痢は不快なものです。
そのため下痢をしている時は下剤を1~2日間飲むのを止めてみましょう。
また便を触った手で壁やベッド柵などを触り、家じゅうを便まみれにすることがあります。
このような行為は、介護者にとってかなりの精神的ストレスとなります。
そのストレスを少しでも軽くするためにも、便で家じゅうを汚す場合は掃除のしやすい環境にしておきましょう。
ベッド周囲の壁に「プラダン」という板を張り付けると、便が付着してもすぐに拭き取る事が出来ます。
「プラダン」とはプラスチック素材の段ボール板のことで、コーナンに売っています。
あまりにも不潔行為の回数が多い場合は、「ミトン」や「介護服」の使用も検討しましょう。
しかしミトンを付けるとオムツ外しを防ぐことができますが、手の自由を奪う事になります。
そのため「かゆいところが掻けない」「テレビのチャンネルを自分で変えることができない」など、本人にとってストレスの大きなものになるので、場合によっては余計暴れたりする場合があります。
使用前には一度、担当のケアマネージャーや訪問看護師さんに相談してみましょう。
使用する際は手首をきつく締め付けないように注意しましょう。
「介護服」とは上下つなぎになっている服で、自分では簡単にファスナーが開けられない作りになっています。
この服を使用することでも不潔行為を予防することができますよ。
家に帰るという
認知症には「記憶の逆行性喪失」という症状があります。
記憶の逆行性喪失とは、新しい記憶から順番に消えていき、最終的に残った記憶の世界が現在の世界と思ってしまうというものです。
そのような場合は、本人の言っている世界に合わせて対応することが大切です。
「家に帰る」と言っている場合は「記憶の逆行性喪失」によって昔住んでいた家を今の家だと思っているため、そこに帰ろうとしていると考えられます。
このような場合「あなたの家はここでしょう」と言っても納得してくれません。
逆にパニックになったり、怒り出すこともあります。
適切な対応としては「今日はもう遅いので一泊して行ってください。」「ご飯を作ったので、せっかくなので食べて行ってください」という具合に、本人の世界に合わせて話をしましょう。
それでも落ち着かない場合は「では近くまで送ります」といい、5分ほどでいいので外を一緒に散歩してあげましょう。
そして本人が落ち着いたらさりげなく自宅へ誘導しましょう。
徘徊する
徘徊により突然家を出ていこうとする場合は、すぐに気付けるようにドアにセンサーを付けることをお勧めします。
玄関にセンサーを付け、認知症の人のポケットに発信機を入れておくことで、その人が玄関を通った際に感知するというものがあり介護保険で給付されるものもあります。
また100円均一で空き巣対策として売っている警報ブザーも役立ちます。
ドアに設置するのですが、ドアが開くと警報がなる仕組みになっています。
スイッチ一つで切り替えができるので、他の家族がドアを開閉する際はoffにしておくことでブザーを鳴らさずにすみます。
またもし一人で外出してもすぐに見つけられるように、交番や近所の人にはあらかじめ声をかけておくことも大切です。
加えて服の内側に名前、住所、電話番号を記載しておきましょう。
民間サービスでGPSを付ける事で居場所を把握できるものもあります。
そのようなサービスを利用すると、万が一の時もすぐに発見できますよ。
こちらの記事では徘徊による対応方法をより詳しく書いています。
家族を泥棒扱いする
「物盗られ妄想」といい、自分の私物が無くなったことに対し「○○(家族)が盗んだ」と言うことがあります。
その時にムキになって否定してはいけません。
泥棒扱いされた当人としてはショックですし、つい「私じゃない」と否定してしまうかと思います。
しかし本人は完全に思い込んでいるので、本人の話を否定するとさらに感情的になります。
なので、そのような場合は、「何がないの?一緒に探すよ」と言い一緒に探してあげましょう。
もし本人が「あんたが盗んだんやろ!」とすごい興奮している場合は、一旦その場を離れるのも一つの対処法です。
あまりにも物盗られ妄想が続く場合は、病院で相談しましょう。
薬の調整で落ち着くことがあります。
それでもおさまらない場合は、認知症以外の精神疾患の可能性もあります。
そのような場合はかかりつけの医師に紹介状を書いてもらい、一度精神科を受診してみるのもいいでしょう。
何でも口に入れる
本人が口に入れたら危険なものは片付けるようにしましょう。
認知症の症状の一つで、食べ物でないものも口に入れる「異食」というものがあります。
この異食は、
・脳の機能が低下しているため、食べ物と食べ物でないものの識別ができない
・味覚の低下により、口に入れても異物と分からない
ことが原因で起こり、便を食べていたというケースもあります。
異食の対策として食べてはいけないものは、本人の手の届かない所におくようにしましょう。
特に口に入る大きさの物には注意しましょう。
また、お膳の周辺に置いてあるものは間違って食べてしまいやすいので、お膳周辺には特に食べ物以外は置かないようにしましょう。
食後にも関わらず「ご飯まだ?」と聞いてくる
認知症に関するテレビでも、食事を食べた後にも関わらず「ご飯まだ?」と聞くシーンをよく見かけますよね。
この症状は認知症の初期症状でもよくみられます。
このような場合も否定してはいけません。
「さっき食べたでしょ」と言っても、本人は忘れてしまっているので効果はありません。
なのでそのような場合は時計を見せながら「12時になったらお昼ご飯を出すのでちょっと待ってて」と返事をすると良いでしょう。
それでも納得いかない場合は、カロリーの低いものを少し食べさせてあげましょう。
暴言、暴力
暴力、暴言という行為がみられても感情的になってはいけません。
認知症になると自分の感情が抑えにくくなります。
また認知症の人は「分からない」「できない」といった不安を抱えていたり、自分の気持ちを上手く伝えられないことからイライラすることで暴言や、暴力という行為が見られることがあります。
しかし暴言が見られるときでも、介護者側は感情的にならないことが鉄則です。
こちらが感情的になると、さらに興奮したり暴力行為に発展することがあります。
暴言、暴力が見られる際は相手の興奮が治まるまで一旦距離をおきましょう。
暴言、暴力の原因が分かる場合は、その原因を取り除きましょう。
おむつ交換などの処置の際に、介護者を引っ掻いたり、つねったりする場合は処置の時のみミトンを付けるのもいいでしょう。
暴言、暴力が治まらない場合は、病院で抗精神薬を処方してもらいましょう。
薬を飲んでも症状が治まらない、異常なくらいの暴言暴力がみられる場合は、認知症ではなく精神疾患の可能性も考えられます。
そのような場合は、かかりつけ医に紹介状を書いてもらい精神科を受診してみましょう。
時間や場所が分からなくなる
今の日時や、自分のいる場所が分からなくなることを「見当識障害」といい、アルツハイマーの初期症状としてもよくみられます。
見当識障害を悪化させないためには、部屋に時計やカレンダーを設置し、毎日「今日は何月何日ですか?」「今何時ですか?」と聞くことが大切です。
また花見や花火などを見ることで、季節を感じてもらうのも見当識障害には効果的です。
そして一日一回は日光に当たることで、生活リズムを整えるようにしましょう。
もし「ここはどこ?私は早く帰りたいんだけど」という発言がありパニックになった場合は「では少し休憩してから帰りましょう。自宅まで送りますよ」というように、本人の世界に合わせて会話するようにしましょう。
急な生活環境の変化などはさらにパニックを引き起こすので避けましょう。
食事を拒否する
食事を拒否する理由は色々あるので、その理由にあった対処法が必要です。
認知症になると食事を拒否することがあります。
食事を拒否する理由として、精神的なものと身体的なものがあります。
精神的な理由は、抑うつ状態や、漠然とした不安感、毒が入っているといった妄想が原因と考えられます。
精神的な理由で食事の拒否があった時は、無理に食べさせようとするのではなく、その時は一旦引きさがりましょう。
そして少し時間をあけて再度食事を促しましょう。
身体的な理由は、入れ歯が合わない、食事が嚙み切れない・飲み込みにくい、便秘でお腹がはる、体調が悪いなどが考えられます。
入れ歯が合わない場合は歯医者で入れ歯を作り直してもらいましょう。
便秘になっている場合は、水分摂取や下剤を使用することで便秘の予防に努めましょう。
食事が噛み切れない・飲み込めない場合は、食事の固さを調整しましょう。
☟やわらか宅配配食を利用すると、食事の硬さを三段階から選ぶことができます。
入浴を拒否する
入浴を拒否する場合は無理に入浴させようとしてはいけません。
入浴を拒否するのは裸になるのが恥ずかしいと感じていたり、知らない人(介護者)に裸にさせられることに不安や恐怖を感じていることが原因と考えられます。
そのような場合、無理やり入浴させようとしてはいけません。
食事の拒否と同様に入浴の拒否があった場合は一旦引き下がり、少し時間を空けてから再度声をかけてみましょう。
介護者も一緒に裸になることで入浴に応じてくれることもありますので、介護者が同性であれば一度試してみましょう。
それでも拒否がある場合は、ドライシャンプーやホットタオルで身体を拭くなどで対応してもいいでしょう。
介護保険でデイサービス(デイサービスで入浴介助してくれます)や訪問入浴もあります。
家族だけで対応出来ない場合は、そのようなサービスを利用しましょう。
薬を拒否する
薬が飲めなくなると認知症の症状が進行したり、持病が悪化したりするため薬の拒否は早急に対応する必要があります。
薬はゼリーやおかゆに混ぜて食べさせることで解決できる場合が多いです。
錠剤を飲み込まないのであれば、かかりつけの医師や薬剤師に相談することで粉薬に変えてもらえます。
また薬の種類によっては、貼り薬で代用できる薬もあります。
上手く薬を飲めないようであれば医師や看護師、薬剤師に相談してみましょう。
不要な物を買う
不要な買い物をしてしまう場合の対処法は事前に知っておきましょう。
認知症になると物事の判断力が低下するので、不要な物を頻回に買う、大量に買うというという行為が見られる場合があります。
また悪質なセールスにもひっかかりやすくなります。
このような場合に「セールスに気を付けなさい」「不要な物は買わないように」と注意しても、すぐに忘れてしまうので意味がありません。
そのような症状がある場合は、通帳、印鑑、カードを持たせないようにし、現金も最小限だけ渡すようにしましょう。
もしセールスで不要な契約をしてしまった場合はクーリングオフ制度を利用できます。
クーリングオフ制度は、本来は契約から8日以内に書面で解約の意思表示をする必要がありますが、認知症の人の場合は8日以上経過していても解約できる場合があります。
いずれにしても不要な契約をしてしまった場合は、早急に消費生活センターに相談しましょう。
こちらから消費生活センターのページにいけます。
大声を出す
大声を出すなどの場合「静かにして」といっても効果はありません。
相手に安心感を与えることが大切です。
認知症の症状で急に大声で叫ぶというものがあります。
これは幻視、幻聴によって混乱し叫んでいる場合と、本人でもよく分からない不安や恐怖を感じ、それが抑えきれずに叫んでいる場合があります。
まず幻視、幻聴による場合、その幻視、幻聴を「そんなものはない」と否定すると余計パニックになるので否定してはいけません。
そのような場合は「ちょっと確認してきますね。」「大丈夫、もう誰もいませんよ。」と本人の幻視の世界に合わせながら、安心できるように誘導しましょう。
また本人でもよく分からない不安や恐怖を感じている場合も「どうしたの?」と優しく聞いてあげることで安心感を与えるようにしましょう。
また病院で抗精神薬を処方してもらうことで落ち着くこともあります。
夜眠らない
夜眠らない場合は昼夜のリズムをしっかりつけることが大切です。
認知症になると昼夜が逆転することがあります。
夜しっかり眠れるようにするには昼にしっかり活動を促すことが大切です。
活動を目的としたデイサービスの利用はとても有効です。
また一日一回太陽の光を浴びることも昼夜のリズムを整える上で重要です。
そして就寝前に足浴をしてあげるとリラックスでき、眠りを促すことができますよ。
そのような努力をしても眠らない場合は病院で眠剤を出してもらいましょう。
眠剤を使用すると夜間のトイレの際に足元がふらつきやすくなります。転倒のリスクが増えるため、【夜間はポータブルトイレをベッド横に置く】【トイレに付きそう】などの介助が必要になる場合があります
性格が変わる
認知症になると性格が変わることがありますが、そのような場合は今の相手の性格に合わせて対応しましょう。
認知症になったことで、
・穏やかだった人が、怒りっぽくなる
・生真面目だった人が、大雑把になる
という具合に変わることがあります。
家族としてはとても違和感があるのですが、本人に元の性格に戻ってもらうのは難しいです。
今の本人の性格に合わせて対応するようにしましょう。
火の不始末
認知症になると、料理の際にしようした火を消し忘れる、タバコの火が消し切れていないということが見られることがあります。
そのため一人の時には火を使わせないというのが一番安全です。
家族の外出中に1人でガス火を付ける可能性がある場合はチャイルドロックをするようにしましょう。
もし認知症の一人暮らしでガスの使用を一切止めさせたい場合は、業者に連絡しガスの大元の栓を閉めてもらうこともできます。
この際、IHクッキングに変更するのも一つですが、認知症の人は新しい機器の使用方法を覚えるのが難しいのであまりお勧めではありません。
タバコに関しては禁煙してもらうのが最善策ですが、それが難しい場合は大きめの灰皿を使用し、常に水を入れておくことで確実に火が消えるようにしましょう。
線香も火事のリスクがあるため電灯式のものを利用するようにしましょう。
現在は火災報知器の設置は義務化されていますが、もしまだ設置されていない場合は必ず設置しましょう。
収集癖がある
認知症によって、ゴミなどを集める「収集癖」という症状が見られることがありますが、その際に介護者は勝手に処分してはいけません。
収集癖の原因の一つとして、本人の抱えている「孤独感」を埋めるために行っている可能性があります。
その他にも「なんとなく必要そう」という理由で集めていたり、妄想により自分の物だと思い込んでいる場合もあります。
いずれの場合も本人にとっては【大切な物】なので、ゴミ扱いしたり勝手に処分してはいけません。
勝手に処分することで、物盗られ症状につながり家族を泥棒扱いする可能性もあります。
収拾したものを処分する際はまず収集した理由を聞いてみましょう。
その上で「でもこれは使いようがないので処分していいですか?」と、本人に了承を得てから処分するようにしましょう。
車の運転をする
認知症の人に車の運転はさせてはいけません。
認知症になると、
・アクセルとブレーキを間違える
・信号無視をする
・高速道路を逆走する
といった可能性が高くなります。
そのため運転させてはいけません。
しかし認知症の人に運転をしてはいけないという話をしても、本人はすぐに忘れてしまいます。
そのため鍵を持たせないようにしましょう。
もし家族の鍵を勝手に持って行ってしまう、鍵を隠しても見つけてしまうという事があれば
車を家の駐車場ではなく近所の月極駐車場を利用し、本人には車は売却したと説明するというのも対策としてあげられます
性的な言動
認知症になると理性が抑えられなくなることから、性的な言動がみられることが多々あります。
この性的な言動は他に熱中できる何かがあるだけで、減る場合があります。
また性的な言動をする対象によっても対応方法は変わってきますので、その点について説明します。
家で介護をしている場合、その性的な言動の対象は妻やお嫁さんになりやすいです。
対象が妻の場合、性行為を求めてくる場合もありますが、実際にはできないことが多いので、軽いスキンシップを取りながら話をそらしていきましょう。
対象がお嫁さんの場合、お嫁さんの立場からするとかなり耐え難いことです。
まずは他の家族がそのようなお嫁さんの気持ちを理解してあげましょう。
そしてお嫁さんが一人で介護をしなくていいように工夫しましょう。
昼間ならデイサービスや訪問ヘルパーを利用し、夜間なら他の家族も一緒に介護しましょう。
もしお嫁さんが一人で介護しなければならず、その時に体を触られそうになったら「止めて下さい」とはっきりと言いましょう。
このような性的な言動は、他の活動を促すことでなくなることがあります。
そのため昼間に掃除や洗濯の手伝いをしてもらったり、趣味がある場合はその趣味に取り組むなどで活動を促すようにしましょう。
認知症の介護Q&A
対応方法の他にも介護する家族が疑問に持ちやすい内容について説明していきます。
Q1:認知症の人は自宅と施設、どちらで生活するのがいいでしょうか?
認知症の人にとって一番良い環境は住み慣れた場所です。
そのため可能ならば施設より住み慣れた自宅での生活を続ける方が良いでしょう。
自宅の方が本人の精神的なストレスが少なくなるので、認知症の症状の悪化も防ぎやすいです。
ただ自宅での生活がままならない場合は施設の入居を考えましょう。
Q2:認知症の精神症状を落ち着かせる目的で先生が薬を変えてくれたのですが、薬を変えてから足元がふらついているように感じます。大丈夫なのでしょうか?
処方された薬の副作用が出ている可能性があります。
一度受診し足元がふらついていることを医師に伝え、薬の量を減らしてもらうか、薬の種類を変えてもらいましょう。
また医師によっても認知症薬で対応するか、精神薬で対応するかなど処方内容がことなります。
今飲んでいる薬で認知症の症状のコントロールが上手くいかないといった場合は、違う病院に一度受診してみるのも一つの方法として挙げられます。
Q3:認知症の介護で疲労こんぱいです。本当に限界です。どうしたら良いですか?
認知症の介護は本当にストレスが多いものです。
家族だけで抱えないようにしましょう。
まず、介護保険を利用していない場合は、介護保険の申請をしましょう。
介護保険の申請はお住まいの市役所窓口で出来ます。
介護保険を利用することで、デイサービスやショートステイが利用できます。
デイサービスなら週に数回、昼間に預かってくれますし、ショートステイなら数日間とまとまって預かってくれます。
このようなサービスを利用しながら適宜休息をとりましょう。
また、認知症介護をしている家族を支援する「認知症の人と家族の会」というものがあります。
認知症の人と家族の会は全国各地に支部があり、認知症の介護をしている家族同士で集まり、介護の相談や情報交換、勉強会などをしています。
電話でも相談に乗ってくれます。
介護により孤独を感じている場合は、こちらにも相談してみましょう。
詳しくはこちらです。
まとめ
★認知症の介護を行う場合、以下の事を踏まえて対応しましょう。
・信頼関係を築く
・尊厳を守る
・環境を変えない
・体調を管理する
・薬を確実に飲む
・自分でできることは自分でしてもらう
★認知症の介護を行う場合は、その症状ごとに有効な対応方法があります。
そのため認知症の対応に困った場合は、こちらの記事を参考にして対応してください。
★認知症の介護はとてもストレスの大きなものです。
家族だけで抱えず、様々なサービスを利用したり、相談窓口に相談するなどしましょう。
この記事はこちらの本を参考にして書いています。
三宅貴夫:認知症の人への対応がよくわかるQ&Aブック 認知症なんでも相談室